· 

買ってもらいやすい購入動線の設計

 

私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。

 

今回は「買ってもらいやすい購入動線の設計」というテーマでお届けします。

 

商品サービスを買ってもらうために色々なプロモーションが工夫されています。普段、私たちが気付く・気付かないに関わらず多くの売るための仕掛けは行動経済学で説明できます。前月に引き続き今回もいくつかの例を示し、今後のビジネスのヒントになればと思います。

 

まず「行動経済学とは?」の復習です。

2017年にリチャード・セイラ―教授(シカゴ大学)がノーベル経済学賞を授賞したことでも有名ですが、一般的な定義として「経済学の数学モデルに心理学的に観察された事実を取り入れていく研究手法」です。

もっと簡単に、「人間の非論理的な心理的作用やそれに基づく判断を活用したアプローチ」(引用:楠本和矢著「トリガー」より)と言えます。

 

さて、私たちが買うかどうしようか悩む時、その躊躇する理由は「買って失敗したら嫌だな」、「思っていたのと違ったら困るな」と考えることが多くないですか?そこで「もし商品サービスが気に入らなければ全額返金しますよ」という申し出が「全額返金保証」です。それなら躊躇せずに購入できますよね。

 

化粧品やシャンプー、育毛剤、ダイエットサプリ、家電商品、布団やまくら、パーソナルトレーニングから葬儀に至るまでありとあらゆる商品サービスで「気に入らなければ全額返金」保証が付いています。

アメリカの有名なマーケター、ジェイ・エイブラハムは著書「ハイパワー・マーケティング」において、「断ることができないオファー」として全額返金保証をリスク・リバーサルと言って導入を勧めています。

 

行動経済学では【損失回避性】で説明できます。人は得をすることよりも、損をすることに過大に反応してしまう傾向があります。つまり購入することで得られるメリットよりもお金を支払うリスクを過大に感じてしまいますので、その躊躇する気持ちを減らすことを狙います。

 

ですから、もし新商品や今までにないサービスを売りだす時、また会社やブランドの知名度が低い時、新たな客層に売りたい時など、顧客の購入ハードルを下げるためにこの全額返金保証の施策を導入すれば良いのです。もちろん返金リスクを事業者側が持つことになりますが、返金リスクと得られるメリット(売上など)を比べるとメリットが上回るケースが多いとされているので検討する価値はあります。

 

また私たちが商品サービスを購入しようとする時、選択肢が多すぎると「どれがいいのか分からない」、「選ぶのが面倒になってしまう」という理由で購入を躊躇することがあります。

 

いっけんお客様の立場なら選択肢が多い方が自分に合ったモノを選べるので、より購入してもらえるように考えられますが、実際は違います。行動経済学の理論で【決定回避の法則】で説明されるように、人は選択肢が多くなると選ぶというストレスを感じ始め、購入に至りません。

 

だからスマホの料金プランを「シンプルS・シンプルM・シンプルL」と3つに絞り、わざわざシンプルという名前まで付けていたりします()。ラインナップを多くすれば、必ずしも買ってもらいやすくなる(売上が上がる)わけではないということです。

 

選択肢と言うと、昔からよくある話でレストランのコース料理を「松・竹・梅」と3つ用意すると真ん中の竹コースが最も売れます。

行動経済学の【極端回避性】の応用です。両極を選ぶことにリスクを感じ、真ん中にあるモノを選ぼうとする傾向です。

また【おとり効果】も使っています。値段設定を松コースが極端に高く、竹コースの値段は梅コースの値段に寄って設定されています。すると竹コースに「お値打ち感」が出て、より真ん中の竹コースを買ってくれるようになります。明らかに選ばれる可能性の低い選択肢、極端に高い松コースをわざと設定しておくことで、より竹コースがお得に感じられて私たちは購入してしまいます。

 

このように何か新しい商品サービスを売り出す時には、3つの選択肢を用意し、かつ一番買ってもらいたい商品サービスを真ん中の価格に設定、しかも低い方に寄せた値付けをすると、お客様に買ってもらいやすくなる可能性が高まります。さらに全額返金保証まで付けると完璧ですね。

 

行動経済学を使ったプロモーションは身近にたくさんあり、実際に私たちも影響を受けています。ぜひ自らのビジネスにも取り入れたいものですね。

 

 

営業プロセス、営業研修、人材育成、セールスコーチなどをご検討の経営者・経営幹部・リーダー・士業の方はお気軽に弊社にご相談ください。