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価格転嫁交渉術

高橋です。

 

私がコンサルティングをしている『営業プロセス研修』のエッセンスを、毎回お伝えしています。

 

今月のテーマは「価格転嫁交渉術」です。昨今の物価高、資源高、人件費高騰など経営環境は厳しくなる一方です。せめてコスト増の分を価格に上乗せしたい、でも取引先との交渉に自信がないという方もおられるかもしれません。先日ある商工会議所でセミナーをおこないましたので、その内容を抜粋してお届けいたします。

 

現在、国(経済産業省や中小企業庁)や地方自治体、商工会議所など多くの機関が、価格転嫁・価格交渉の後押しをしてくれています。ツールや資料の配布だけでなく、サポート体制として全国に「よろず支援拠点」を開設し経営相談や指導、講習を開催してくれています。また法律面でも下請法や下請振興法、フリーランス法の整備、独占禁止法に基づいて公正取引委員会による調査や事業者名の公表など、価格転嫁、価格交渉しやすいバックアップ体制があるとは言えます。

 

そこで今回は、実際の交渉にあたり、どのような順番で何をしないといけないのかをお伝えします。

 

まずは価格を交渉するポイントです。

価格交渉は下請けが元請に対して値上げを要請するケースが一般的ですが、そもそも定期的に取引価格を見直すことは双方にとって必要なことです。下請けにとっては事業を継続させなければならないですし、取引先にとっても下請がなくなれば事業が立ちいかなくなります。価格が適正であるということは、双方にとって大切であるという認識が必要です。

 

そして、いきなり交渉とならないように、日頃から取引先と日常的にコミュニケーションをとっておくことも重要です。その中で、コストが上がっている実情なども伝えることができるでしょう。

 

また、自社の強みが何であるか、取引先にとって自社はどのような価値提供をしているのかも認識してくことです。例えば、「急な発注にも対応できる」「安定した品質」「これまでの実績」など、その「なくてはならない」強みを交渉に活かすべきです。

 

その上で、実際に交渉に当たる3ステップを説明します。

 

ステップ1 事前準備

交渉に当たっては、値上げの根拠となる客観的なデータを提示する必要があります。原材料費やエネルギー費などの価格変動前後のデータを提示したり、投入した時間やそれに伴う人件費の上昇分など定量的に把握し実際にかかっている原価がどのように変化しているかを示すことが不可欠です。原価の推移などデータ収集のために色々なサイトが提供しています。一例を上げると、埼玉県「価格交渉支援ツール」、財務省「貿易統計」、資源エネルギー庁「石油製品価格調査」、新電力ネット「全国の電気料金単価」、農林水産省「食品価格動向調査」等々データを収集するのは容易です。それらを使って、しっかりと資料を準備することが大切です。

 

ステップ2 価格交渉

事前に準備した客観的かつ合理的なデータを提示しながら、値上げ交渉します。その時に、自社として理想的な価格を「提示価格」、相手の反応を見ながら妥協する「目標価格」、これ以上は譲歩できないギリギリの「最低価格」を決めて交渉に当たりましょう。

あわせて価格以外で対案や取引条件を提示できないかも考えます。例えば、加工方法や設計の見直し、梱包方法や納品頻度の見直し、支払条件や保証期間の見直しなどで価格は現状維持でも妥結できる交渉もあります。

また適切なタイミングで申し入れることも重要です。大手の値上げのタイミングに合わせる、取引先の価格改定に合わせる、3ヶ月から半年前には取引先と共有しておくことも大事です。急な値上げでは相手も承諾しにくいでしょう。

 

ステップ3 文書化

交渉の経緯について、その都度、価格や条件について決まったこと、決まっていないことを文書化しておきます。取引条件やルールの文書化の例として、製品単価の算出ルール、追加費用の負担ルール、運送経費の算出ルール等々です。後々、間違いのないように双方で保管します。

 

以上が価格転嫁、価格交渉のステップです。

 

「確実にステップを踏むならば成功の確率は上がる」とドラッカーも言っています。価格転嫁、価格交渉をしなければならない方は是非参考にしてください。

 

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